パートナーと考える将来のそなえについて

LGBT
90年代に盛り上がりを見せたゲイブームが去った後、近年再び、セクシュアル・マイノリティをとりまく環境は大きく変化してきています。セクシュアル・マイノリティを表すLGBTという単語を多くの情報媒体で見聞きするようになりました。
また、2000年代前後は、公に行われるセクシュアル・マイノリティ関連のパレードやイベントは札幌・東京・名古屋・大阪に限られていましたが、今や全国各地で盛んに行われるようになってきています。

そのような中で最も大きな変化と言えば、渋谷区と世田谷区を皮切りに、地方公共団体が条例や要綱で同性間の関係性を証明する、同性カップルの公的承認(いわゆるパートナーシップ制度)を行うようになったことです。
パートナーシップ制度は今も日本全国の様々な地域に広がりを見せており、大阪市においても2018年7月9日に「大阪市パートナーシップの宣誓の証明に関する要綱」が施行され、同日、証明書(受領証)の交付式が行われました。

現在、日本では法律上、同性の者同士が法律婚(いわゆる同性婚)をすることができません。

今までは世間に無いものとして扱われていた二人の関係性を地方公共団体が承認しこれを証明したことは、セクシュアル・マイノリティに対する世間の理解がまた一歩前進したといえるでしょう。そして、パートナーシップ制度を通じて当事者が得られるものは、二人の関係性が公に承認されたという自己肯定感であり、それは何にも代えがたいかけがえのないものです。

一方で、セクシュアル・マイノリティの権利の擁護に関する活動にこれまで関わってきた中で、当事者が最も関心がある問題は相続医療に関する同意の二つであると感じました。しかしながら、上記のように地方公共団体が発行した証明書を得たとしても、法律上の婚姻に準ずるような保障がなされるものではありません。そこで、問題を解決する手立てが必要となります。

次に、問題を解決するために準備しておくべき書面を具体的に挙げます。これらの書面をあらかじめ作成しておくことによって、ある程度の解決を図ることができます。

今からやっておくべきそなえ

1.任意後見契約

判断能力が無くなった場合、自分の代わりに契約の締結などをしてもらう人をあらかじめ決めておく契約です。

2.医療に関する同意書

病気やケガで意思表示が出来ない場合に備えて、どのような医療行為をどこまで行うのか医療機関と協議する人を、家族に優先して自分の指定する人にしたり、面会する権利を与えるための書面です。

3.パートナーシップ合意契約

二人が共同生活を送るうえでの約束事を決めておく契約です。パートナーと一緒に金融機関でローンを組む際に必要となる場合があります。

4.遺言書

亡くなった後、財産を誰にどれだけ残しておくのかなどを書いておく書面です。

5.死後事務委任契約

亡くなった後、身辺整理や葬儀の手配を行ってもらう人と交わす契約です。

認知症などで物事の判断がつかなくなった時、意思表示が出来なくなった時、または死後に、お二人の権利を守り、意思を尊重するためには上記の1~5に掲げている書面を準備しておくことが有効な手段となります。必ずしも全ての書面が必要となるわけではなく、お二人の現在の状況を踏まえた上で必要な書類が判断されることになります。
全ての書類に共通することは、自身で物事の判断がつかなくなってしまった場合には、もはや作成することは出来ないということです。したがって、お二人が元気なうちに書類の作成を済ませておくようにしましょう。
ただし、これらの書面を整えたからといって、全ての権利が守られる保証があるわけではないことにご注意下さい。
今のところ法律上の婚姻関係に勝る法的な保護はありません。


しかしながら、残されたパートナーの生活を守るために、出来うる手段はとっておきましょう。まずはご相談下さい。
近い将来、これらの書面の作成が不要となる日が来ることを願ってやみません。

さらに詳しく知りたい方は、お気軽に お問い合わせページからご連絡ください。