建設業の許可や変更の手続きに関すること

建築業許可1

建設業法はおおまかに言うと、「建設業の健全な発達を促進し、公共の福祉の増進に寄与することを目的」(建設業法第1条)として作成されました。これは、質の良い建設業者を増やし、発注者の権利を保護するとともに、私たちが安心して暮らせるような社会を目指した法律であると言えます。
基本的に建設業を営む場合には建設業の許可が必要ですが、例外として、軽微な工事(500万円以下)など一定の場合には許可は不要となります。

建設業の許可業者は、許可を持っていない業者と比較すると社会的信用度が高いため、金融機関から融資を受けたりする場合に有利となるケースがあります。また、注文者によっては、許可がないと工事の下請けなどの契約を結ばない業者もありますし、市役所などが発注する公共工事の元請業者になるためには、たとえ軽微な工事を請け負う場合であっても、その前提として許可が必要となります。

弊所では、建設業を営んでおり許可を検討されている方のご相談や、すでに許可を取得しているが、決算変更届や経営事項審査などの手続きが複雑でよく分からないという方のお手伝いを承っています。お気軽にご連絡ください。

許可業者は社会的な信頼を得ることが出来ますが、それにともなって責任や義務も発生します。許可を取得した後も、監督行政庁への定期的な報告を欠かさないようにし、適正な管理・経営をこころがけましょう。
なお、下記に記載しております手続きについては、監督行政庁が大阪府の場合を想定しております。したがいまして、監督行政庁が他の都道府県や国土交通省の場合は、各担当に直接ご確認下さい。また、分かりやすさを重視しているため、例外や細目については記載を省略している箇所があることもご了承ください。

許可

許可の種類

許可にはまず、大臣許可と知事許可があります。

大臣許可
2つ以上の都道府県におのおの営業所がある場合
知事許可
1つの都道府県にのみ営業所がある場合

大臣許可の場合は国土交通省、知事許可は各都道府県知事が許可を出します。

次に、特定建設業と一般建設業に分かれます。

特定建設業
発注者から直接請け負う1件の元請工事について、下請人に出す額の合計額が4000万円以上(建築一式工事の場合は6000万円以上)となる場合
一般建設業
特定建設業以外の場合したがって、少なくとも発注者から直接請け負わない限り(元請でない限り)は一般建設業となります。

建設工事の種類と業種

建設工事は、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事と、27の専門工事(電気工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、造園工事、など他22種類)に分類され、合計29の業種が法律で定められています。

土木一式工事と建築一式工事については、企画、指導や調整を行い、総合的な立場に立ち、マネジメント的な要素をもつ工事となります。したがって、原則的には元請けの立場であることが前提の許可となります。また、一式工事の許可を受けていれば、関連する専門工事を請負うことができると思われがちですが、専門工事だけを請負う場合は、その専門工事についての許可が必要となります。

なお、同一の建設業者が、ある業種では一般建設業の、ある業種では特定建設業の許可を取ることは可能です。

許可の要件

許可を得るためには次の5つの要件の全てを満たす必要があります。基本的には一般建設業も特定建設業も要件は同じです。

1.経営業務の管理責任者がいること

経営業務の管理責任者とは、建設業について、経営業務の管理責任者としての経験が一定期間以上ある者を言います。経営業務の管理責任者を配置する理由としては、建設業の管理・経営について経験のある者を取締役等に置くことによって、その会社や個人の適正な財務管理能力や労務管理能力を担保するためだと言われています。

しかしながら、近年は、建設業に関する制度の充実や会社制度の変化など、企業の適正な経営管理の確保を巡る状況は変化してきており、取締役を置くこと以外にも経営の安定性を確保できる環境が整えられてきています。現在、経営業務の管理責任者の配置要件について変更や廃止の是非について検討がなされています。

経営業務の管理責任者には次のような条件があります。

  • 法人の場合は「役員」、個人の場合は「その個人」を経営業務の管理責任者としなければならない
  • 常勤でなければならない
  • 専任技術者と兼任できる
2.専任技術者がいること

専任技術者とは、請負契約の適正な締結や工事の履行を技術面から確保するために、常時その営業所に勤務する者をいいます。建設工事についての専門的な知識を有する技術者が、常時、技術指導を行う中で建設業の営業が行われる体制を確保することを目的としています。このような監理体制のもと、建設工事に関する請負契約の適正な締結や遂行が確保されると言えます。

専任技術者には次のような条件があります。

  • 許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての「国家資格」又は「実務の経験を有する技術者」を営業所に置かなければならない
  • 常勤でなければならない
  • 経営業務の管理責任者と兼任できる
  • 電気工事及び消防施設工事については、「実務の経験」では専任技術者の要件とはなりません。
  • 2つ以上の建設業について実務の経験を持っていたとしても、経験期間が重複している場合、どちらか1つの業種についてのみ計算されます。
  • 特定建設業の場合は専任技術者の要件が厳しくなります。
3.財産的基礎・金銭的信用があること

財産的基礎・金銭的信用については、一般建設業と特定建設業でその意味合いが異なります。
一般建設業においては、許可を取得するということは対外的に信用を得ることであり、その信用を担保する要素の一つとして財産の有無を審査されます。

一方、特定建設業では、発注者との間で交わされる請負契約の請負額が高額になります。
そして、その請負契約が、金銭面において最後まで滞りなく履行することが出来るという保証を、経済的水準の観点から審査されます。

一般建設業

次のいずれかに該当すること。

  • 直前の決算において、自己資本の額が500万円以上であること
  • 金融機関の預金残高証明書が、500万円以上の資金調達能力を証明できること
  • 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
特定建設業

次の全てに該当すること。

  • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2000万円以上であること
  • 自己資本の額が4000万円以上であること
4.欠格要件に当てはまらず誠実性が認められること

欠格要件に当てはまらない条件として、過去において一定の法令の規定等に違反した者等でないことが挙げられます(建設業法第8条参照)。また、誠実性については、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが必要です。

5.建設業の営業を行う事務所(営業所)があること

建設業の「営業所」とは、常時、建設工事に係る請負契約等を締結し、見積りや入札など、請負契約の締結等を行うために全般的な作業を行う事務所のことを言います。したがって、登記上だけの本店や建設業の業務と関係のない本店は該当しません。

営業所には次のような条件があります。

  • その営業所について、いつも使用する権限があること
  • 建物の入り口付近に会社名などのプレートがあること
  • 固定電話、fax、パソコン、机などの設備が備わっていること
  • 代表者や専任技術者などが常勤していること

なお、公共工事については、入札を行っている自治体(都道府県・市区町村)の管轄内に営業所を置くことを入札参加の要件としている場合があるので、入札を行う予定がある場合には営業所の場所をどこにするのか注意が必要です。

更新

建築業許可2

許可の有効期間は、許可のあった日から5年間となっています。その後も引き続き許可業者として建設業を営む場合は、許可の有効期限が切れる30日前までに「更新」の申請をしなければなりません。
更新の申請は有効期限が切れる3カ月前から行うことができます。
なお、有効期間を経過した場合、更新申請はできなくなってしまい「新規許可」の申請をしなければなりません。余裕をもって申請を行うようにしましょう。

注意事項

個人で取得した許可を法人に引き継ぐという手続きはありません。したがって、法人成りをした場合は、法人について「新規許可」の申請をすると同時に個人について「廃業」の届出をすることになります。

親が個人で取得した許可を子が引き継ぐという手続きはありません。親の建設業を、許可を途切れさせることなく継続して行いたいのであれば、事前に法人として許可を取得しておかなければなりません。

許可更新の期限が迫ってきた場合であったとしても所管行政庁から事前の連絡は来ません。許可の有効期間については、ご自身で把握しておくようにしましょう。

建設業の許可証(建設業許可通知書)を紛失したとしても、再発行はされません。金融機関や顧客などに対して許可を証明する場合は、監督行政庁に「許可の証明」の発行申請を行い、発行された証明書で証明することになります。

変更等の届出

変更届

建設業の許可業者は、法令で定める事項に変更があった場合、定められた期限内に監督行政庁へ、変更した事項を届出なければなりません。これは許可業者に課せられた義務であり、届出を怠った場合は過料や許可の取消処分の対象となる場合があります。その他、更新及び業種追加等の申請や、経営事項審査の申請ができなくなります。どのような内容が法定された変更事項であるのか、届出期限とともに覚えておくようにしましょう。

決算変更届

事業年度終了後に毎年提出します。決算変更届の副本は全て、「更新」の際の提示資料の1つになっています。これを提示することにより、建設業許可の取消処分の要件の1つである「引き続いて営業を休止した場合」に該当しないことを証明するためです。
また、国家資格者等の変更の届出は、決算変更届と同じタイミングで行います。

経営事項審査

経営事項審査(以下、経審とする)とは何でしょうか。建設業者の施工能力、財務の健全性、技術力を客観的に判断するために、これらを点数化して評価することです。それでは経審は何のために行うのでしょうか。それは、公共工事を国、地方公共団体から直接請負う建設業者は、経営事項審査を必ず受ける必要がある(建設業法第27条の23)と規定されているからです。

国や地方公共団体が公共工事を発注する場合、工事に見合った規模や実績のある建設業者を指名したいと考えています。なぜなら、公共工事の発注にあたっては業者選びから慎重に行われるべきであり、後々のトラブル(工事途中の倒産や施行不良など)は極力避ける必要があります。そこで、公共工事の入札をおこなう建設業者が経審を受けることによって、現在の信頼度を数字で表した「総合評定値」を算出し、これを客観的な指標として公共工事を発注する際の担保とします。そのため、公共工事に元請業者として入札するためには経審を受けることが義務付けられています。

おおむね下記のような手順で経審を経て入札まで行われます。


なお、経審の結果通知書の有効期限は決算期から1年7カ月です。したがって、継続的に公共工事に入札するためには、毎年経審を受けて、結果通知書を受ける必要があります。
さらに詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせページからご連絡ください。