成年後見制度とは

成年後見

成年後見制度とは、物事を判断する能力が不十分な人(認知症、精神疾患、知的障害のある方)が不利益を受けないように、後見人と呼ばれる代理人が本人の財産や権利を守るしくみのことです。後見人を家庭裁判所が選ぶ「法定後見」と、あらかじめ自分で選んでおく「任意後見」の2種類があります。

「法定後見」は自分が物事を判断する能力が無くなってから後見人を家庭裁判所に選んでもらいますが、「任意後見」は自分が物事を判断する能力があるうちに自分で後見人を選んでおく、という点で大きく異なります。

成年後見制度利用の手続きについて

「法定後見」「任意後見」で手続きが分けられます。

「法定後見」の場合、本人の住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。申立てをすることができるのは基本的には4親等内の親族、例えば夫、妻、子、兄弟姉妹、おい、めい、いとこなどに限られます。申立ての際に、後見人を誰にしたいのか後見人候補者を書くことはできますが、最終的な判断は家庭裁判所が行います。

「任意後見」の場合、公正証書という書面で、将来後見人になってもらいたい人(後見人の候補者)と任意後見契約という契約をかわします。ご自身の判断能力が衰えてきたら、家庭裁判所から監督人が選任されたうえで、後見人の候補者が正式に後見人として選ばれます。


Q&A よくあるご相談内容

ご親族の方やご本人など

  1. 寝たきりで意識がはっきりしない父の不動産を売却したいのですが。
  2. 亡くなった父の遺産分割をすることになりましたが、認知症の母がいます。
  3. 私が父の後見人になることはできますか。
  4. 不動産の売買契約や遺産分割協議が終わったので親の後見人をはずしたいのですが。
  5. ひとり暮らしをしている母に会いに、久しぶりに実家に帰ったら、全く使用した形跡のない高額な商品がたくさん届いていました。
  6. 私はひとり暮らしをしており、身寄りがいません。今はまだ元気ですが認知症や病気になってしまった時など、将来のことが心配です。

施設や社会福祉協議会の方など

  1. 入居されているお客さんに身寄りのない方がいらっしゃいます。この方が最近認知症になってしまい、財産の管理やケアプランの契約ができなくて困っています。
  2. 生活保護受給者の方でも成年後見制度を利用することはできますか。
  3. 外国籍の方でも成年後見制度を利用することはできますか。
  4. 成年後見制度を利用するとしたら、費用はどの程度かかりますか。
  5. 成年後見人が選任されるまで、だいたいどの程度の期間がかかりますか。
  6. 成年後見人に、ご本人の医療行為の同意書にサインはしてもらえますか。
  7. 成年後見人に身元引受人(身元保証人)になってもらうことは可能ですか。
  8. 身寄りのない方が亡くなった場合、成年後見人に遺体や遺品の引き受けはしてもらえますか。
  9. とりあえず相談だけお願いしたいのですが。

Q1.寝たきりで意識がはっきりしない父の不動産を売却したいのですが。

お父さんは不動産の売却のための契約を結ぶことができません。したがって、成年後見制度を利用して後見人に代わりに契約などを行ってもらうことになります。
たとえ、お子さんであっても後見人に選ばれていない限りはお父さんの代わりに契約をすることはできませんので、ご注意下さい。また、後見人が就いても、お父さんの不動産が居住用不動産に当たる場合は、売却には家庭裁判所の許可が必要です。

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Q2.亡くなった父の遺産分割をすることになりましたが、認知症の母がいます。

認知症を患うと、程度によっては遺産分割などの難しい法律判断が出来なくなってしまいます。その状態でお母さんをまじえて遺産分割の協議をしたとしても、その協議は無効とされる可能性が高いでしょう。したがって、成年後見制度を利用して後見人に代わりに協議を行ってもらいます。
認知症の程度によっては協議が有効になる可能性もありますが、後々問題になるのを避けるために成年後見制度を利用したほうがいいでしょう。

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Q3.私が父の後見人になることはできますか。

法定後見の場合、申立書に後見人の候補者を記載する欄がありますので、そこにご自身の名前を書くことができます。家庭裁判所が、あなたがお父さんの後見人にふさわしいかを判断した上で決定します。
任意後見の場合は、お父さんの判断能力が衰える前に、あなたとお父さんとで任意後見契約を結んでおけば、お父さんの後見人になることができます。

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Q4.不動産の売買契約や遺産分割協議が終わったので親の後見人をはずしたいのですが。

売買契約が終了したからという理由で後見人をはずすことは出来ません。後見制度は一度利用を開始すると、本人の判断能力が回復するか、本人が死亡するまで継続します。

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Q5.ひとり暮らしをしている母に会いに、久しぶりに実家に帰ったら、全く使用した形跡のない高額な商品がたくさん届いていました。

お母さんの判断能力が衰えてきている可能性があります。病院で判断能力が衰えているとの診断を受けた場合、後見人をつけることが可能です。
後見人が選ばれた後であれば、お母さんがおひとりで行った高額な商品の売買契約は取り消すことができます。
これ以上、使用しない高額な商品の購入を続けられるのであれば、一度専門家に相談した方が良いでしょう。

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Q6.私はひとり暮らしをしており、身寄りがいません。今はまだ元気ですが認知症や病気になってしまった時など、将来のことが心配です。

信頼できる友人や、専門家(司法書士、弁護士、社会福祉士)などの第三者に、後見人になってもらうといいでしょう。
判断能力が低下する前であれば、ご自身であらかじめ後見人を選んでおくことができます。そのためには後見人になってもらいたい方と、任意後見契約を結ぶ必要があります。任意後見契約書は、公正証書という文書で作成しなければなりませんのでご注意下さい。

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Q7.入居されているお客さんに身寄りのない方がいらっしゃいます。この方が最近認知症になってしまい、財産の管理やケアプランの契約ができなくて困っています。

施設の職員の方であったとしても、お客さんの財産の管理やケアプランの契約はすることができません。家庭裁判所に後見申立ての手続きを行い、選ばれた後見人に財産の管理とケアプランの契約を行ってもらって下さい。

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Q8.生活保護受給者の方でも成年後見制度を利用することはできますか。

はい。利用することができます。身寄りのない方の場合は市長申立、それ以外の場合は法テラスを活用することによって利用する方法があります。
ただし、各市町村やご本人の事情によって要件などが異なりますので、一度ご相談下さい。

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Q9. 外国籍の方でも成年後見制度を利用することはできますか。

はい。利用することができます。日本国籍を保有している方と同様の手続きでご利用いただけます。

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Q10.成年後見制度を利用するとしたら、費用はどの程度かかりますか。

まず、成年後見人の申し立ての資料作成費用として12~20万円程度(実費含む)。
年に1度、成年後見人への報酬の支払いがあります。こちらは裁判所が判断するので一概には言えませんが、24万円(1か月につき2万円)程度が標準的な費用になります。
申立て費用は申立人が、後見費用はご本人が負担することになります。
ただ、Q8で書いたとおり生活に困窮している場合などは、市区町村の支援事業を利用して支援を受けることが出来る場合もあります。

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Q11.成年後見人が選任されるまで、だいたいどの程度の期間がかかりますか。

ご本人を交えた関係者の方々とヒアリングをした後、1~2週間程度で申請書を作成します。
その1~2週間後、裁判所で面接を行います。
何も問題がなければ1~2週間程度で審判がおります。
郵送されてきた審判書を後見人が受け取ってから2週間が経過した時に確定します。
審判が確定してから10日程度で後見人の登記が完了します。
手続きが全て完了するのは2か月程度と考えて下さい。

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Q12.成年後見人に、ご本人の医療行為の同意書にサインはしてもらえますか。

ご本人の医療行為についての同意というのは、原則としてご本人以外の者が出来るものではありません。したがって、ご家族の方も同意は出来ません。
しかしながら実際は、ご本人に意識が無いような場合には病院側から親族の同意を求められることがほとんどです。そして、ご家族もいらっしゃらないような場合には誰が同意をするのかということが問題になります。
ご家族に同意をする権限が無いのと同じように、成年後見人にもありません。
ただ、同意書にサインがないと手術をすることが出来ないという医療機関もあります。そういった場合は、ご本人をよく知る関係者が集まって、ご本人にとって一番いい選択肢を選ぶことになります。

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Q13.成年後見人に身元引受人(身元保証人)になってもらうことは可能ですか。

成年後見人がご本人の身元引受人になることはできません。ただし、ご本人に成年後見人がつくことにより金銭管理や複雑な法的手続きを成年後見人が行うことから、施設の利用料の滞納やトラブルによる退去などがおこりにくくなります。

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Q14.身寄りのない方が亡くなった場合、成年後見人に遺体や遺品の引き受けはしてもらえますか。

ご本人が亡くなられた時点で、成年後見人ではなくなることから、遺体の火葬や遺品を引き受ける権限はありません。弊所では、家庭裁判所と協議しながら対応するようにしております。なお、相続人がいる場合は、相続人にご遺体や遺品の引き受けをお願いすることになります。

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Q15.とりあえず相談だけお願いしたいのですが。

まずはお電話かメールでご相談下さい。実際にご本人に会ってみないと判断が難しい場合はお伺いします。
受任に至らなかったとしても相談料はいただきませんので、ご安心下さい。

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